本当に色々あった6年間。
始まりはある戦い。
魔術師の見習いだった俺は、いきなり聖杯戦争なんてものに巻き込まれて。
セイバーという少女に出会い、共に戦った。
戦っていくうちに俺も成長し、セイバーも変わっていった。
そして、2人は互いを意識し、やがて恋に落ちたんだ。
だけどセイバーは己が騎士道を貫くために、自分を殺し、俺の気持ちを拒んだ。
でも、気持ちは変わらず、ただ、求め合った運命の夜。
そして、聖杯戦争の終結。
それが意味することは、この世界との別れ。
「最後にあなたに伝えたい。シロウ、私はあなたを愛しています」
本当に輝いていた、少女。
きっと出会うことはないけれど、いつか、もう一度出会えたら。
俺もきちんと言おうと決めていた言葉。
ああ、セイバー。俺も愛している。
時間の流れが違う俺たちはもう二度と見えることはないけれど。
この気持ちだけは変わらない、と。
3年間。
3年間、その気持ちを持ち続けた俺は、聖杯戦争が始まった日、セイバーとであった日にアルトリアという少女に出会ったんだ。
それは本当に運命的な出会い。
容姿はもちろん、名前まで同じだなんて。
ほんとうに、生まれ変わりではないかと思ったぐらいに似ていた。
だけど、英霊は世界と契約したら最後、輪廻の輪からはずされるという。
しかし、それも望みがあるが故に。
望みがなくなったセイバーは輪廻の輪に戻り、王でもなく、騎士でもない普通の家庭で育ち、人間らしく生きられる。
だが、聖杯戦争から3年。
アルトリアは16歳だ。
論理的におかしい。
つまり、アルトリアはセイバーの生まれ変わりなんかじゃない。
そう思っても、俺はアルトリアがきになっていた。
今に思えば。
このころから俺は、彼女に惹かれていたのだろう。
そんな出会いの冬から季節は移り、春。
桜が散る季節にあった出来事はねハプニング。
いきなり花見に行こうと遠坂に誘われたときなんて、どうしようかとあせったものだ。
なんたって、遠坂だ、アルトリアとのことを、ばれたらなんて言い訳しなくてはならないのか。
まぁ、実際はまだ何の関係でもなかったけど。
でも、結局ばれてしまって。
命を失う覚悟をしたものだ。
だけど、告白する勇気がない俺に、遠坂は励ましてくれたんだっけ。
そうして、桜が舞う季節、春に。
俺とアルトリアは交際を始めたんだ。
そんな暖かな季節から一転。
ある真実を告げられた驚愕の夏。
アルとリアがセイバーの生まれ変わりであることが判明した。
論理的にはありえないことだったが、アルトリアの意識にセイバーの意識が混入していたから間違いない。
なんでも、騎士であるセイバーが一度でも”騎士で無ければよかった””少女としていきたい”と
望んだ場合。
ひょんなことで、魂が分離し輪廻の輪に戻っていたとしたら、セイバーという英霊とは別に魂は輪廻を繰り返すことが論理的には可能だというのだ。
つまり、英霊としてのアーサー王の魂と、少女としてのアルトリアの魂。
2つは1つから分かれた同じ色の魂で、同じ色である限りひとつの魂なんだから……。
そこで、問題がひとつ。
輪廻を繰り返すことなく、英霊としての魂であったセイバー。
輪廻を繰り返し、普通の人間として生きてきた、アルトリア。
起源は同じだけども、今に至る過程が違う2つは、長い年月の間に別の物になっているのが普通
しかし、アルトリアはセイバーの意識、過去、望み、性格に侵食されていった。
終わりは近く、そんな悲しい物語。
俺は、セイバーかアルトリアかどちらかの二者選択を迫られた。
そして、時はついに迫る。
俺は、過去か、未来かで未来を選んだ。
だって、俺はもうセイバーに似ているアルトリアじゃなくて、アルトリア個人を愛していたから。
そして、セイバーは最後の言葉で
“シロウはきちんと今を生きているんですね。貴方は私のような存在で、足を止めるような人ではなかった。それが私はとても嬉しい。貴方は変わらずあり続けていることが
私はたまらなく嬉しいのです”
“誓いましょう
貴方の幸せが永久に続くように
聖なる泉の中で、永遠に祈る事を――――――誓いましょう”
最後まで誇りと、優しさを持ち、俺の後押しをしてくれた輝かんばかりの騎士王は。
ずっと隣にいる。
「どうかしたのですか?士郎さん」
普通の少女として。
6年目。
セイバーと出会って6年。
アルトリアと出会って3年。
四季は巡り、果て無き時を刻む。
そして、また冬。
12月に、俺は
「アルトリア、結婚してくれ」
ずっと隣にいてくれた少女にプロポーズした。
アルトリアは少し考えていた。
それはそうだ、なにせ、突然のことだからな。
だから気長に待つつもりだ。
待つつもりだったのだが。
「いや、です」
………断れるとは思っていなかったわけで。
正直、かなりへこんだ6年目の冬。
そうして、年は移り。
再び、あの日がやってきた。
「はぁ」
今回はアルトリアにふられてしまった俺は、二重のショックで倒れそうだった。
仕舞いには、藤ねぇや、遠坂、桜にまで同情され、影では笑われる始末。
死んでしまいたい気分だった。
ついでに、俺はここ1年のうちに正義という理想は捨てたる
アルトリアだけを愛し、アルトリアだけを見ると、消えていったセイバーに誓ったからる
それでも、少しは未練があった。
それを振り切って、初めて俺はアルトリアだけの衛宮士郎になろうと決めていたのに。
断られるとは思っていなかったので、本当に俺はへこんだ。
で、自然とアルトリアとも疎遠になっていた最近。
衛宮家に一本の電話が。
「もしもし、士郎さんですか?今日、冬木市中央公園でお話があります」
ただ、用件だけで切られた電話。
俺は少し顔をあわせるのがいやだった。
2月1日
セイバーと出会い、アルトリアとであった日。
アルトリアとであった公園。
周りに人気はなく。
珍しく雪が降りそうな夜に。
優しい面持ちでアルトリアが待っていた。
「士郎さん」
そして、優しい声色で
「愛しています」
セイバーと同じことをつぶやき。
「結婚してください」
俺が言った言葉をアルトリアが言った。
なんて、幻想的な告白。
「プロポーズをするなら、この日にと決めていたんです。すみませんでした、断ったりして。どうしても私から言いたかったので……!?」
照れながらしゃべるアルトリアを、俺は抱きしめていた。
愛しい人がこんなにも近くにいるってことは、こんなにも幸せで満ち足りていることなんだ。
だから、俺の隣にはアルトリアがいる。
それは何年先も変わらない。
幸せな事実だから。
最後に。
セイバー、俺幸せになったよ。
いまでも、きっと俺の幸せを願ってくれているであろう、騎士王に。
そう、呟いた。